◆三思一言◆◆◆竹アラカルト⑷ 2021.06.28
◆孟宗竹発祥の伝承
寂照院の仁王門を入るとすぐに「日本孟宗竹発祥之地」の石碑があり、「禅僧道元が中国の杭州より持ち帰り当地に植えられたのが日本の孟宗竹の始まり」という寺伝が記されています。そしてもう一つ、寂照院の西北・河陽ヶ丘住宅の入り口の公園にも竹林が保存されており、「孟宗竹発祥之地」の石碑があります。
この伝承は、明治35年(1902)の筍栽培法に関する調査記録(『乙訓農会報』第123号)に採録されており、ここでは寂照院の院主が中国に遊学した黄檗山の友人から贈られたと記載されています。黄檗山(萬福寺)の開基(1661)は、中国からやってきた「隠元」ですから、この話では孟宗竹の伝来は江戸時代中期以降となります。また最初に植えられたのは「小字大見坊」(寂照院の西)と具体的ですので、「道元(鎌倉時代)」と「隠元」の混乱はさておき、このあたりが「発祥之地」という伝承の蓋然性は高いと思われます。
孟宗竹は北海道以南に広く分布しており、「発祥之地」伝承はどこにでもありそうな話ですが、実は寂照院以外では鹿児島の仙巌園(磯庭園)が唯一の例です。島津家の別邸として造営された庭園には「江南竹林」が保存されており、元文元年(1736)に2株が伝えられものが全国に広まったと解説されています。
◆初めは観賞用
孟宗竹が、まず庭園の植栽として愛でられたのだという認識はとても大切です。『乙訓農会報』にも「当時にありては、孟宗竹の幹枝普通在来の竹類に比し優美にして盆栽用に適するより、之を庭園等に栽植し単に愛玩用に供せしが如し」としっかり書かれています。
しかしそのことを理解するのはとても難しいことで、先日、洛西の西山地蔵院と西芳寺を拝観して、やっとイメージをつかむことができました。西山地蔵院は「竹の寺」と称するほど、立派な孟宗竹林に囲まれています。西芳寺は「苔寺」として有名ですが、庭のあちこちには孟宗竹林があります。庭師さんにお話しを伺うと、敷き藁をして食用にしたり、竹枝で箒を作ったりされているそうです。
竹はいろいろの種類があり、その姿・形はいうまでまなく、幹・枝も含めて日本庭園には欠かせない重要なアイテム。竹の歴史をふまえての名庭めぐりも一興です。
寂照院
河陽ヶ丘二丁目東公園の竹林
河陽ヶ丘二丁目東公園
西山地蔵院の孟宗竹林
西芳寺(苔寺)の孟宗竹林